大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪家庭裁判所 昭和29年(家イ)18号 審判

申立人 村井美代(仮名)

相手方 村井一男(仮名)

主文

申立人と相手方とを離婚する。

理由

本件申立理由の要旨は申立人は昭和二十三年○月○○日相手方と婚姻したものであるが、相手方は酒飮みで暴行性を帯びており、些細なことから屡々申立人に対して暴力を振い、更に昭和二十五年頃からヒロポンを打つようになり、働くことを嫌い、失業保険金が貰えるようになれば勤めをやめ、保険金が貰えなくなれば勤めるというようなことを繰返し、収入は殆んどヒロポン代に使つて家計に生活費は殆んど入れてくれなかつたのである。そして申立人が嫁入り仕度を持つて来なかつたという理由で申立人を苛め、申立人の実家へ出刄庖丁を携えて強談に及んだこともあつたので、申立人は昭和二十五年頃離婚の意思で家出したが、相手方が改悛するということであつたので、再び同居を続けていたが相手方はその後も相変らずヒロポンを打ち、申立人を暴行虐待したので、申立人は相手方と同居することができなくなり、昭和二十七年○月頃家出したのである。

以上のような次第で、もはやこれ以上相手方と婚姻生活を続けることができないので、主文と同旨の調停を求めるというにある。よつて考えるに、申立人の戸籍謄本、家事調査官の調査報告書、証人大田一郎の証言、並びに申立人相手方各本人尋問の結果を綜合すると、申立人の主張事実はすべて認めることができる。そこで、右の事実は民法第七百七十条第一項第五号に所謂婚姻を継続し難い重大な事由に該当し、調停の経緯、その他一切の事情を考慮すれば申立人と相手方とを離婚するのが相当と認められるから、調停委員の意見を聴いた上主文のとおり審判する。

(家事審判官 五味逸郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例